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利益を出すDPC病院

西日本に、患者別疾病別原価計算を行っているDPC病院があります。すでにすべての患者の疾病別の日々の利益が計算できます。DPC病院は、「診断群分類に基づく1日あたり定額報酬算定制度」をDPC/PPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)採用する病院をいいます。 包括評価部分と出来高評価部分とを合わせて診療報酬が算定されます。包括評価部分の範囲はホスピタルフィーと呼ばれる基本的費用(施設使用料など)をいいます。出来高はドクターフィー、医師個人の技量を評価する要素が強い報酬で医学管理、高額検査、手術等から構成されます。両者が診療群分類別に決められた、1日当たりの診療報酬額が支払われます。 出来高病院では、請求に歯止めが利かないため米国の制度を模し、創設された制度です。 患者別疾病別原価計算は、患者一人ひとりに要した材料費や労務費、経費を直接費として患者に直課し、患者がどの部門(診療科、病棟)に入院したのかにしたのかを明らかにし、部門別損益計算により計算した間接的に必要となる他のすべての経費を患者に配賦してすべての患者の一人当たり原価を計算する方法です。 その病院の病院全体の一定期間の患者の損益をみると、この病院では患者数でいえば40%以上の患者が赤字で退院しています。金額ベースでいっても近い数字で退院していることが判ります。 患者別疾病別原価計算においては、営業利益ベースにおけるすべての損益を個人個人に割り振られる結果になるので、黒字の患者と赤字の患者の差が病院の営業利益になるというイメージです。 そもそも国の点数の決め方から赤字がでてしますという疾患があります。収益は国の決めた診療報酬で決まるので、あとは原価の大きさにより赤字が出る出ないが決定されます。 この病院は2年前に建て替えをしていますが、建て替え前とでは減価償却費、リース料等の間接費の配賦に4000円以上の原価が増えています。 固定費を外して限界利益でみるということも可能ですが、ここでは常に全部原価で計算をしています。したがって、病棟別にみて間接費の配賦額が異なりますし、また稼働率が高いときと低いときでは、当然稼働率が低いときのほうが、一人当たり患者の固定費の配賦額が増加し一人当たりの利益が減ってしまいます。 月に100人の入院がある診療科(病棟)と200人の病棟では、一人当たりの月額固定費は2倍の差が出てしまいますね。 さて、ざっとですが当院で一人の患者の損益が赤字になる(傾向的)要因を説明します。 1.手術時に時間がかかる 2.多くのオペに直接関与しない医師・看護師が手術に入る 3.在院日数がⅡ期間(DPCでは、入院期間が短くなると診療報酬が下がる仕組みになっています)を超える 4.転棟、退院時期が遅れる(他の病棟への移動や退院が遅れると3に該当します) 5.リオペ(再手術は点数が取れないものもあります)がある 6.感染が起こる(治療コストは請求できません) 7.アクシデントレベル2以上でⅡ期間を超える(3と同様です) 8.アクシデントレベル3b以上でコストが発生する(治療コストは請求できません) 9.クリティカルパス外処方をする(標準から外れた治療によりコストが増大します) 10.他科受診、他病院受診がある(自院に支払い義務があります) 11.入院した病棟稼働率が低い(固定費の配賦が大きい) 12.救急入院が多い(請求できないコストもある) 13.出来高が少ない(高額な検査、オペ等は出来高で多いほど収益はあがる)   ただし、患者別利益は、患者数や出来高領域に大きく影響されることがわかります。結局のところ、高密度で質の高い医療を目指す必要があり、短期間での入院、稼働率、増患や退院支援、出来高アップ、生産性向上を行うことが利益を出すポイントであるという結論です。   これらに関する実施事項を列挙し、徹底的に管理することがDPC病院において利益を出すポイントであるということが分ります。...

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病院における管理会計

厳しい時代迎えを、DPC病院であれ、ケアミックス病院であれ、療養病床をもつ病院であれ、どのような業態の病院でも管理会計が必要となりました。管理会計により、活動を計画し、また実績を迅速に把握する。そしてそれらをつぶさに分析するとともに的確に行動することが、時代を乗り越えるためのポイントだからです。 なお、管理会計は企業活動を管理する会計をいい、報告のための財務会計と区別される会計です。管理会計には、月次で行われる予算実績管理や、指標管理、そして病院原価計算等があります。 病院原価計算には、部署別活動の巧拙を判断するための部門別損益計算や経営戦略、あるいは診療政策を管理するための患者別疾病別原価計算、そして機器を購入するかどうかを判断するときの特殊原価調査といったものが含まれます。さまざまな先行指標と実績指標の比較を考慮したうえで、毎月の各部門の損益をみて、どこに経営上の課題があるのかを発見し手を打ちます。 間接部門のコストにイレギュラーはなかったか、コメディカルへのオーダーは十分であったのか、また合理的に運営されたのか。さらに外来、病棟といった直接部門には、新たな課題が発生していないかといったことが調査されます。予想された患者が来院したのか、また外来からの入院比率は、入院患者のうち手術対象患者はどうであったのかといった指標を管理しつつ、部門別損益を確認するなかで、増患や単価、紹介率、稼働率、在院日数、コスト等の課題が発見されます。 DPC病院においては、さらにDPC固有のマネジメントができているのか、ロスがないのかといったことへの検証が行われますし、また、患者別疾病別原価計算を考慮することにより、自院の得意な治療をどれだけ利益のでる治療に代えていけるのかと言ったことへの注意が払われるようになります。自院の治療のポートフォリオをどのようにつくっていくのかを検討する資料ともしていきます。 なお、特殊原価調査とは、医療機器を購入するか、リースするか、レンタルするかを決定するための経営意思決定のための原価計算です。医療機器を購入する前に、病院の患者構造や医師のスキル、地域における他病院の運営状況を勘案したうえで、自院に適した医療機器への対応を決定することを目的としています。 これらについても、大型機器のみならず中小型機器についても同様の処理を行う必要があります。その場合、MEがすべての一定程度の重要性をもつ医療機器における利用頻度、故障、修理、医療事故についての個別履歴を管理しておく必要があります。 何れにしても管理会計を導入しなければ、暗闇のなかで手元の少しの明かりを目当てに仕事をしなければなりません。とりわけ部門別損益計算や患者別疾病別原価計算の考え方を知る。そして現在導入しているものをどのようにうまく使えばあるべきかたちになるのかについて十分に考慮する。あるいは、新規にどのように導入していくのかを考えることが病院管理者の役割であることをよく理解しなければなりません。 患者別疾病別原価計算の整備には、それなりに時間を必要としますが、まずは部門別損益計算を行う体制をつくりあげることができれば、管理会計導入の本格的なスタートを切ることができます。部門別損益計算において、翌月15日に月次決算が終了する会計体制を同時に確立することで、病院経営幹部は、各部門の運営状況をつぶさに把握し、合理的な運営を行うきっかけをつくりあげることができるようになります。 部門別損益計算の導入運用手順は、 内部統制及び会計制度の現状調査 会計処理修正 指標管理体制整備 部門別損益計算導入 分析手法の提供 月次管理者会議の合理的運営 業務改革への情報提供 目標利益確保 といったながれで行います。 どのような業態であっても、病院であれば少なくとも部門別損益計算の導入は必要です。業務の可視化の精度が上がれば仔細な行動を行えるようになることは明らかです。管理会計の導入により肌理の細かいマネジメントができることを理解し、積極的な取組みを行っていくことが有効です。                      ...

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診療所繁栄10のポイント

外来診療を生業とする一般診療所が毎年、微増しています。傾向は、有床診療所(ベッド19床以下の診療所)の廃止を超えて、無床の診療所の新規開業が多くあったことを意味しています。医療の必要な高齢者がこれから増加していくとしても、彼らは在宅での医療を受ける機会も多くなり、皆高齢者が通院するものでもありません。なので、開業が盛んになれば既存の診療所と間での競争が激しくなることは必至です。 さらに、今回のようなコロナ騒動があればなおさらですが、コロナ中、来院を控える傾向があるのは言うまでもなく、コロナ後も日本経済回復の遅れから、家族の所得が減少したり予想される医療費の自己負担が増加することで、受療回数(患者が来院する回数=日本は医療機関にかかる回数が世界一です)低減も予想されます。このような環境下において診療所が繁栄し続けるためには、受診者の年齢層を広げるとともに、比較優位性をもつ活動をしなければなりません。 以下のポイントに留意して診療所運営を行う必要があります。 ビジョンをしっかり定めたうえで、戦略を明確にし、事業計画と年間目標を明確にして目標から現在の行動を決定する HPやパンフ、チラシ等の媒体や営業活動によりプロモーションを行い、自院を地域により浸透させる 朝早くか、夜遅くまでの診療を行うなど、他の診療所の診察していない時間に診療する。また土日や祭日にも診療日を設定する 連携を強化することや、新しい治療や診療科を設置することで新患への訴求力を高める 地域住民のため診療所固有の健康倶楽部を組成し、会報を発行。役立つ情報開示で地域住民の健康管理とともに来院促進を行う 日常的に診療所において休日や昼間の時間を利用して、セミナーを開催し病気の不安をできるだけなくす マニュアルやチェックシートにより仕事の手順やノウハウの整理をしっかり行う 職員の力を引き出すために一定の基準職務基準等による職員の公平公正な評価と継続的な職員の教育を行いリピート率を引き上げる  訪問看護ステーションやケアマネと組んで、外来だけではなく、やはり在宅にも興味をもつ 経費を無駄にせず計画的な資産形成を行うなど現金を増やすことで次に備える ということがそれらです。 これらをひとつひとつ積み重ねることで必ず診療所は活性化し、ながく地域で繁栄する診療活動を行うことができるようになります。 マーケティングの5P、すなわち場所、価格、製品、販促、非凡なものについて検討し、他の診療所に負けないもの、地域住民から信用、信頼、安心される診療所をつくりあげていくことが繁栄の要諦(ポイント)ということになります。新型コロナ、少子高齢化、米中関係悪化、ブクレジットを含めた欧州問題、世界的景気低迷など心配事は絶えませんが、上記をアレンジし、何かを変えることに、我々も果敢に挑戦していきたいと考えています。 ...

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コミュニケーションが大切

組織においては、コミュニケーション(ヒトの間で行われる感情や思考の伝達)がとても大切です。コミュニケーションが仕事の軸になるからです。コミュニケーションが活発に行われる組織では、1+1以上の成果を挙げることができます。 少なくとも、 連携により円滑に事が進む ある業務を相互に補完し合える 何かあったときに支援し合える 他者から啓発される、学べる機会を持てる 一人ではないという意識が自分を鼓舞する といった効果が考えられます。 振り子が逆に振れると大変なことになります。邪魔する、協力できない、助け合えない、けなし合う、排除するなどの行為は明らかに生産性を阻害します。ヒトが重要な資源である医療機関では、明らかにコミュニケーションの良し悪しで、成果が大きく異なります。職員が、たった数人しかいない診療所でも、コミュニケーションがうまくいかず、職場がギクシャクし、生産性が落ちてしまうことがあります。人間関係が悪くなると物事が進まないのは明らかです。院内コミュニケーションをどのようにとればよいのかを考えてみる必要があります。 なくてはならない事項は次のものです。 組織のビジョンが明確である 具体的な実行スケジュールが決定されている 各職員の役割が明確である 組織トップが常にものごとに執着し、うまくいくよう気配りをしている 職員一人ひとりの業務が、計画通りに進んでいるのかがチェックされている うまくいかない理由があれば、組織全体でそれを支援し、修正している 成果をあげる職員を評価する 成果をあげていない職員を教育する 何よりも職員が相互に信頼し合っている これらが一つでも欠けると、本来のコミュニケーションを円滑に行うことが難しくなります(なお、ここでのコミュニケーションは社会的活動を前提としており、単に仲が良いということだけを対象としているのではありません)。仕組みがなくても、コミュニケーションができている組織は、特定の職員がリーダーとして高い意識をもち、コミュニケーションをとれるよう行動し、結果を出しています。ほんの数人が業務を円滑に行うため、まとまることで、組織が成果をあげているのです。 しかし、リーダー頼りのマネジメントは長続きしません。リーダーシップをとっている者が異動したり退職すれば、コミュニケーションは悪くなる可能性があるからです。仕組みがなければなりません。 中期経営計画立案、目標管理制度やBSC(バランストスコアカード)による年度目標の管理、指標管理や管理会計による現状の可視化、さらには業務マニュアルの運用や業務改善提案、教育システム、評価制度が整備されていることで目的を達成します。 完全でなくてもよいのですが、小さい組織であったとしても、上記を整備していこうという方向や具体的な指示が必要です。徐々に、共通の目標が自院や各部署のコミュニケーションを活発化し、職員の覚醒を促すからです。 なお、職員間の関係性を改善するために、組織で一体となった行動がとれるよう、地域イベントやボランティア、そしてときには飲み会などを行うことも有効です。 私は、飲み会でのコミュニケーションは無駄と思っていて、自分は好きではありませんでしたが、メリハリの効いた機会に食事をすることは必要かな、と思っています。 コロナの時代、緊急事態宣言の前でしたが、会計事務所の所内で10人程度の食事会をしました。一切話をするのを禁止にしたので、ちょっと豪華な食事を黙々と皆が食べているだけで、奇妙な光景ではありました(終わってからは、マスクをしたうえで話をしてましたよ)。 しかし、皆満足した顔をしていたので、一緒にイベントをする事は明確な理由があればそれぞれの気持ちに一体感を生むと、改めて気付いた時間でした。ただ、基本は組織内の仕組みづくりが徹底して行われなければなりません。 この部分を忘れることなく、院内コミュニケーションを活性化し、各職員や各部署の機能が最大限発揮できるよう、リーダーの日々の活動が望まれます。我が身に置き換えると難しい事ですが、あるべき形にできるだけ早くしていきたいと、私は小さな決意をしています。              ...

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人間を軸とした経営

人間中心の経営が行われなければなりません。人、時間、情報、モノ、カネという経営資源そのもののうち、人を軸に組織を運営することを人間中心の経営といいます。人が中心で医療は行われるのは当たり前、労働集約型知的産業なのだから。という議論ではなく、より深く人に関与しながら、本人の動機を喚起する考え方をいいます。 昔は動機付けという考え方で、なんとなく他律的に聞こえる思いがありましたが、最近はエンゲージメントという概念がはやりです。「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」をエンゲージメントというようですが、そのためには何が必要かということが議論されなければなりません。 パーパスという考え方も出てきており、目的をもう一度明らかにしよう。それぞれが、「自分ならどうするか。自分なりに考えを逡巡させた結果個人の目標に行き着く」という結論。「周りからなんと言われようとも情熱を持って取り組むファーストペンギンになる」。「皆がそれを認識し、ファーストペンギンを支えるフォロワーが揃えば、そこから目的をベースにした行動が生まれる」という捉え方をしています。しかし、これも優れた個人がいなければなりません。 もっといえば皆がそういった自発的能動的な人でなければならないなど、一般化できない環境がなければバーパスという考え方は徹底しないと思います。なので、一人ひとりのニーズと組織として必要な動機を一致させるコミットメント(約束)を基礎とした人間中心の経営が必要だと理解しています。 コミットメントがキーワードであり、そこに誘導するために本人のニーズと組織の目標を提示し、そこを合致させる上司の取り組みが必要です。そこには依頼と受容があります。これは君しかできないという領域を捜し、伸ばし、そこを捉えて組織のなかでチームでの活動を誘導するという発想です。「コミットメントによる人間中心の経営」について、これから体系化していきたいと考えています。    ...

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病院マネジメント

日本の病院は、国民皆保険制度のもと、廉価で高い質の医療を提供してきました。医療は仁術であり、利益を目的として運営するのはおかしいと、医療従事者も考えていたし、国民もそのように考えていました。国が元気で勢いのある時代では、医療は他の事業とは明確に峻別された特殊な仕事であると信じられていたからです。しかし、実際のところ民間病院は、一般の企業と同じように利益を得て運営されなければ、納税や職員の処遇改善、設備投資を行うことができないことは明らかであり、裏側では必死で利益を出すマネジメントが行われていました。 人の行動や経営の在り方は、すでに産業革命以来多くの企業が実践をしてきており、その手法を医療に導入すれば、成果は挙がったはずです。 しかし、日本の病院は多くが医師により運営されており、海外のように経営のプロフェッショナルが運営するものではありません(写真はマネジメントに長けているバンコクグループのサムティベート病院と連携するヤンゴンのパラミ病院)。医学部に組織マネジメントを行える医師を育成するためのカリキュラムがありません。優秀な学生が医学部を目指しているし、医師が将来大学や、医療機関、研究機関で組織運営を行うリーダーとなることが明らかであるにも関わらずです。 これはとても特殊な環境であり、国民皆保険制度のなかで診療報酬のルールに従って運営していれば、収益が得られたことにより、その必要性がなかったということも背景にあります。もちろん、医師は医療に特化し、マネジメントは海外のように経営に長けたプロフェッショナルが病院を運営するのであればそれでもよいのでしょうが、そのような仕組みがないなかでの現状には腑に落ちないものがあります。 実はプライマリーは、医師や看護師等の医療従事者がいれば成り立つものであり、そこに組織マネジメントは必要ありません。 しかし、病院ができて、さまざまな職種の雇用や彼らの管理、設備への投資、与えられた診療報酬を活用するため限られた経営資源で最大限の成果を挙げる戦略立案やその実践、他の医療機関の連携等の管理を行わなければならないなかで、経営のフレームワークをもたない病院は、うまく運営できないことは明らかです。 日本の財政がひっ迫し、社会保障費抑制のなかで医療費の傾斜配分や削減が行われるようになると、より一層マネジメントの必要性は増してきます。これは民間病院ひとりの出来事ではなく、7千億円以上の一般会計繰入により運営されている自治体病院にも、いえることだといわれています。 そこで病院は企業経営を学ばなければならないと、ながく指摘されてきました。多くの優れた病院はこぞって企業会計や企業経営のロジックを導入し、病院なりにアレンジしながらよい成果を挙げています。ただ、これらのながれはまだ病院の一部のものでしかなく、全体にまで昇華されたものではありません。今後人口が減り少子高齢化が進むとともに税収が減り、社会保障費が抑制される日本。 増税が進み、診療報酬が引き下げられ、受療率が下がる環境の下、地域包括ケアシステムの中で、病院は従来とは異なる医療を提供する事が期待されています。 職員が力を発揮できる仕組みやマネジメントが行われなければ医療を守る事は出来ません。日本の医療は、いよいよ正念場に差し掛かったという事だと考えています。 どのような行動をとる病院が残るのか、病院マネジメントに関する議論をこれから当ブログで、頻回に取り上げていこうと思います。  ...

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権限と責任

組織は人により構成されます。組織は役割により、管理職、監督職、一般職に分類されます。病院であれば、理事長や副院長、事務長や看護部長、診療支援部長とった者が管い理者に該当します。その下位に師長や課長などの中間管理職(監督職)があり、一般職員が配置されるという図式です。それぞれの階層は、病院の運営に対し、その目的を達成するため責任をもち行動しなければなりません。 組織構成員全員が組織の運営をそれぞれの役割として担っています。役割を与えられた者は、その役割を果たす責任を負わなければなりません。ここで役割を規定するものの一つを権限といいます。権限とは、個人がその立場でもつ権利・権力の範囲をいいます。 また、果たすべき責任とは、立場上、当然負わなければならない任務や義務をいいます。権限を得ることは同時に責任をもつことであるといわれます。病院職員は、それぞれがどのような権限と責任をもつのかについて知り、日々の業務を適切に行うことが求められています。権限は、起案、審査、承認、(実施)、報告という行為に区分されます。 「起案」は何かを提案すること、お伺いを立てること、そして「審査」はそれが組織のルールや目的に合致したものかどうかをチェックすること、さらに「承認」は、審査を経て上程された事案の実施を許可することをいいます。組織におけるすべての業務はこの3つの段階を経て実行されます。さらにその結果がどうであったのかを、最終権限者に「報告」するということで、ある業務が完結します。権限の行使をこのフロー以外で行うことはありません。 特定事項において上記の何れかの権限を有するものが責任をもち、それぞれの行為を行い、業務を遂行します。組織は、すべての仕事を洗いざらい抽出するとともに、責任者を列挙し、上記権限を誰が、何時、どのように、行使するのかを決定する必要があります。そして決めた権限の行使の形体を権限規制に取りまとめ、組織に開示することにより権限(=責任)を明確にすることが求められています。権限を決定し開示、それを遵守させることが組織運営を的確に行うための要諦です。組織の仕事は、権限や責任が曖昧ではあるものの、実務で慣習化している不文律で動いていることが多くあります。 これだと組織の意図していない権限行使が行われる可能性が高く危険です。一端権限と責任を文章(規程)化したとしても、それを吟味して活用するというより、誰かが当該文章を起点として行動し、それが行動の基礎として使われているものの、常に規程に立ち戻ることはあまりありません。しかし、規程が現実に合っているのかという疑問を持つ人が現れたときに検証作業が行われるという意味では、やはり規程があることが有為です。少なくとも権限規程をつくる→業務を行う→時々検証する、というながれをつくれると、組織の意図した権限行使が行われると考えています。...

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アセアンの発展とリアリティ

先日、マレーシアKLを訪問したときに、時間があり、せっかくなので、スリアKLCCに行き繁華街の雰囲気に触れようということで地下鉄に乗りました。クラナジャヤLTR線です。KLCCはKLCC地区にある複合ショッピングセンター。 ペトロナスツインタワーと地下や下階部分を共有しています。KLCC駅とは地下通路で結ばれています。セントラル駅から乗車しましたが、日本の各地にある地下鉄と遜色ないものでしたが、到着時間が遅れる、途中で止まるという事故が多いようで、私たちも危うく次の飛行機に間に合わない目にあうところでした。 アセアンは発展しているものの、まだまだ日本のような精緻なダイヤに基づく運行や、故障なく運行できないんだなと、改めて日本のすごさと、アセアンのこれからの可能性を感じたのでした。 ことほど左様に、まだまだ私たちから、アセアンにもっていくものはたくさんあるということを確信し、ビジネスを行うためのマーケティングを行う必要があると理解したのでした。 もちろん、医療や介護については何回も、KLでチェックしていますが、表面的ではなく実際にこちらで生活してみなければ分からないこともたくさんあるのではないかと考えました。あまり手を広げず、例えば、我々が既に診療所に投資しているベトナムなど、ある程度仕事ができる国から地に足をつけた対応を行おうという決意をして、同国を後にしました。  ...

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病院改革の基本

以前から説明していましたが、医療は人であるということが最近さらに納得できるようになりました。医師がリーダーシップをとれるかどうかということが最も重要であることは間違いがありませんが、例え、現場の医師がリーダーシップをとっても、トップが正しい、誰からも尊敬されるリーダーでなければ、病院運営がうまくいかない事例が数多くあります。 現場の医師のやる気をそぐ事例が数多くあり、それが職員に伝播して、病院のパフォーマンスが落ちるというながれです。基本的に、現場は患者さんのために、反射的に動く意識をもって活動しており、その意識が減ずるということはありません。しかし、ふと我に返ると、評価はされない、教育されていない、体制が変わらない、それどころかコストカットの指示は多く、かつ不足する機器や修理すべきアイテムに対してまったがかかるといったことが続き、心が折れる、といった表現が適切かもしれません。 ここで留意すべきは、戦略です。病院が適切なヴィジョンをもち、組織戦略を確立し、トップがその事業計画を一つひとつ達成しようと、日々自らが動き、また指示をして、また職員を鼓舞しながら一緒に汗をかく。増患のためになにをするのか、医師の招聘や、イベント、営業活動や連携強化といったことに対し、自院の業態に合わせた活動を行うことができれば、活気もでてくるし、地域医療を維持するための適性利益を得ることもできます。ヴィジョン、戦略不在が、組織を疲弊させ、縮小均衡を招き、トップの判断を誤らせ、ネガティブにすることで、組織の成長が止まるという帰結です。 トップは、あるべきマネジメントに必要な人材を確保し、現場の部署長に役割を与え、依頼をし、支援しながら、日々の病院改革を行わなければならないことが分かります。そうはいっても、現場スタッフでやる気のない事務職が多く、医事に問題がある、事務処理に課題があり、現場が安心して仕事ができないという事例もあり、職員一人ひとりが、やる気を出す、力をつける、本来やらなければならいことができるよう評価育成することももちろん、重要なテーマです。 トップがリーダーシップを発揮する、現場も人を育成する、そして皆がやるべきことをしっかりとられる組織づくりが求められていると考えています。これらは当たりまえのことですが、現場に入ると、この通りにできないさまざまな障害があり、いつも悩みます。しかし、なんとか絡んだ糸をほぐすように、一人ひとりとの話し合いを通じ、現状の認識と、到達点の提示を行いながら、できることを着実に行なえるよう努力していかなければと思います。...

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医療療養病床のこれから

医療療養病床の役割として、急性期のあとの患者さんのケアを行うポストアキュートと地域における慢性期の急性増悪さんを受入れるサブアキュートがあります。 とりわけこれからは、地域包括ケア病床ではなく医療療養病床がサブアキュートを受ける主役になる可能性があります。 平均在院日数の設定や、DPC類似病態別医療区分の採用を日慢協では主張していますが、医療療養病床の医療区分によっては在宅での対応が可能になってきていることを考えると、時代のながれとして、医療療養病床の役割を強化していかなければ、生き残りが厳しい時代になってきたということもあります。 一方、現場で日々医療療養病床に入り、実体を垣間見ている立場からいえば、医師の数が不足することや、看護師数不足、慢性期医療に慣れていない看護師が多く存在すること、相談員さんがすべての業務を担えない環境、増患がとても難しい状況から、受け入れられる患者が限定的になってしまう現状があり、なかなか難しい状況であることも事実です。 逆に、住宅での在宅医療のレベルが高くなってきたり、地域における訪問看護の充足している地域においては、在宅での高い成果をあげていることが知られており、病院に依存しない医療が行われていることも事実です。 ということは、サブアキュートにおいて、急性増悪した患者さんに迅速に入院してもらい、安定したら地域で在宅での対応をしてもらおうとういながれができる病院と、できない病院が峻別されてくる可能性があります。前者には高い点数が、そして後者には比較的低い点数が与えられ、前者でなければ残れない医療制度が導入されることになれば、医療療養病床の集約、そして住宅化が行われることになるのでしょう。サブアキュートへの対応ができる医療療養病床は、地域包括ケアシステムのなかで、在宅医療にも進出し、訪問看護ステーションを設置して、地域に根を張りながら、病院の地位を固めていくことになります。もちろん地域連携のなかで関係を造り上げていく部分と独自で展開する領域の比率は病院それぞれであるとしても、自己完結的な活動をする病院は迅速に対応ができるので、結果として地域から訴求されることになり、結局は自己完結的なかたちで活動をするところに分があるのではないかと考えています。 いずれにしても、医師、看護師、コメディカル、そして外と内をつなぐ相談員さんやワーカーさん、そしてプロモーションや地域浸透を行うために活動する病院関係者が協力して、成果をあげられる病院とそうではない病院の差がついてくるのでしょう。誰もが納得できるビジョンと、強いリーダーシップ、そして、医療に強い信念と使命感をもって活動できる職員が数多くいる病院が、崩壊しつつある社会保険制度のなかで、しっかりと残り役割を果たしていくのだと考えています。私たちのクライアントがそうなるように我々もできることをするし、また、多くの医療療養病床が、その方向に進むように頑張っていかれることを期待しています。皆が頑張り、皆が幸せになる医療が行われること、それが私たちの望みです。...

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